左利きの子はそろばん不利?770名中150名を指導してわかった”むしろ有利”な理由

「うちの子、左利きなんですけど、そろばんって右手で弾くんですよね…?」——こんな心配の声を、保護者の方からよくいただきます。左利きのお子さんにそろばんを習わせるべきか、不利になるのではないかと、迷う気持ちはとてもよくわかります。
こんにちは、川上スクールジャパン(KSJ)のたけのり先生です。国内490名・海外280名、合計770名の生徒を指導する中で、これまで約150名の左利きのお子さんを教えてきました。結論からお伝えします。左利きの子は、そろばんで”むしろ有利”です。この記事で、その理由と、ご家庭での支え方を、25年の指導経験からじっくりお話しします。
結論:左利きの子はそろばんで”むしろ有利”です
まず結論からお話しします。左利きのお子さんは、そろばんの学習において不利ではありません。それどころか、慣れてしまえば右利きのお子さんより計算スピードが速くなることが多いです。
KSJ全体で770名以上の生徒を指導していますが、そのうち約150名(全体の約20%)が左利きのお子さんです。特に海外在住の生徒に左利きの割合が多い印象があります。そして、その左利きの生徒たちが、関東大会や全国大会の上位入賞、段位取得、短期間での1級合格など、素晴らしい成績を残してくれています。
「左利きだから上達が遅いかもしれない」という心配は、ほぼ当てはまりません。むしろ、これからお話しする”ある仕組み”によって、左利きのお子さんは左右の手を同時に使えるという、他にはない大きな武器を手にすることになります。
なぜ”有利”なのか?両手を同時に使えるからです

そろばんは、右利きでも左利きでも、必ず右手で珠を弾いて計算します。ここまでは皆さんご存じかもしれません。ポイントはここから先です。
右利きのお子さんは、同じ右手でそろばんを弾き、同じ右手で答えをノートに書きます。つまり、計算と記入のたびに、そろばんの珠を離して鉛筆を握り直す「持ち替え」が発生するのです。一瞬一瞬の持ち替えは小さく見えますが、積み重なると大きな時間のロスになります。
一方、左利きのお子さんはどうでしょう。右手ではそろばんを弾き、左手には鉛筆を握ったままです。答えが出たら、そろばんから手を離すことなく、左手でスッとノートに書けます。持ち替えが、そもそも要らないのです。
ピアノを思い浮かべてください。右手でメロディーを弾きながら、左手で伴奏を入れる——その”両手連動”ができる人は、一本の手だけでメロディーと伴奏を交互にこなす人より、圧倒的に速く曲を奏でられますよね。左利きのお子さんのそろばんは、まさにこれと同じ原理です。右手で暗算しながら、間髪入れずに左手で答えを書いていける。この時間的な余裕が、勝負どころのプリントや大会、検定試験で大きな差になって現れます。
26ヶ国の左利き生徒を指導してきたリアルな実例

KSJはオンラインで26ヶ国の生徒を指導しており、日本国内と同じくらい海外生の左利きにも多く出会います。いくつか実例をご紹介します。
イギリス在住のある女の子は左利きでした。はじめは慣れない右手そろばんに少し苦戦していましたが、2年ほどで1級に合格。今では暗算の速度もクラスで上位です。
ドイツ在住のある男の子も左利きでした。入会直後は「右手で弾くのが難しい」と何度も言っていて、慣れるまで約2ヶ月かかりました。けれども、その壁を越えた瞬間から、彼の計算速度は一気に伸びていきました。
どちらの生徒にも共通するのは「はじめは抵抗があったけれど、越えた後は右利きのお子さん以上のスピードが出た」ということです。両手が独立して動かせるという、ピアノ演奏のような強みが発揮されるからです。
左利きのお子さんを持つ海外在住の方で、ご家庭の近くにそろばん教室がない場合は、オンラインという選択肢があります。海外在住でもそろばんは習える!26ヶ国の生徒が学ぶオンライン教室のリアルもあわせてご参考ください。
KSJでは”左利き専用”の特別指導はしません

「左利きの子には、専用のカリキュラムがあるんですか?」とよく聞かれますが、結論は”いいえ”です。KSJでは、左利きのお子さんに対して、右利きのお子さんと同じ指導をしています。右手でそろばんを弾く練習をしてもらいます。
ただし、アドバイスを少しだけ変えます。右利きのお子さんには「えんぴつを持ち替えて、ゆっくり丁寧に書いてね」と伝え、左利きのお子さんには「答えが出たら、少しでも早く左手で書き始めてね」と伝えます。左利きの”両手同時作業”という武器を、最初から意識して使ってもらうためです。
右手に慣れるまでの期間は、無理をせず「ゆっくり正確に動かすこと」を最優先にしてもらいます。どうしても珠の位置が分からなくなってしまうお子さんには、そろばんの桁の一部に小さなシールを貼り、色で”いま計算している場所”が分かるように目印をつけることもあります。
保護者の方が思っている以上に、子どもたちの順応力は本当に素晴らしいものです。利き手と逆の手を使うことに最初は抵抗があっても、1〜2ヶ月で慣れてしまうお子さんがほとんどです。心配しすぎず、やさしく見守ってあげてください。
2ヶ月の壁を越えると成長が一気に加速する理由
左利きのお子さんの多くは、入会からおよそ2ヶ月ほど「右手で弾くことへの抵抗」を感じます。鉛筆の持ち方に比べて、指先を細かく動かす動作は脳が慣れるまでに少し時間がかかるのです。
ただ、この2ヶ月を越えた瞬間から、成長カーブが一気に立ち上がります。これには理由があります。右手でそろばんを弾く動きが自動化されると、左利きならではの”利き手でノートに書ける”という最大の武器が、一気に効き始めるからです。
私が指導してきた感覚では、2ヶ月を越えた左利きのお子さんは、同じ級の右利きのお子さんより1問あたり2〜3秒ほど速くなることもあります。10問のプリントなら、それだけで20〜30秒の差になる計算です。検定や大会の1点を争う場面では、この差は決定的です。
ですので保護者の方には、ぜひ”最初の2ヶ月”を我慢して見守ってほしいのです。「あれ?最近ちょっと楽しそうにしてる」と感じ始めたら、加速カーブに入ったサイン。そこからの伸びは、驚くほど早いですよ。
なぜそろばんは右手で弾くのか?「漢字と同じ」理由
ここで「そもそも、そろばんは右手で弾かないといけないの?」という根本的な疑問にお答えしておきます。
答えはシンプルです。そろばんの計算方法そのものが、右手で弾くことを前提に設計されているからです。
たとえば、漢字の書き順を思い浮かべてください。上から下、左から右という順序は、右手で書くことを前提に整えられたものですよね。書道の筆も同じです。左手で同じ順序で書くと、どうしても不自然な動きになってしまいます。
そろばんもまったく同じ考え方です。四則計算の指運び、繰り上がり・繰り下がりのリズム、暗算のときに頭の中でそろばんを動かすイメージ——そのすべてが「右手で珠を弾く」ことを基準に組み上げられています。左手で弾こうとすると、この長年の知恵に逆らうことになり、上達が大きく遠回りになってしまいます。
ちなみに、「左手で弾かせます」と指導するそろばんの先生はほぼいません(もしいたら、少し不思議だと感じたほうが良いかもしれません)。右手指導は”左利きだからやさしくしてあげる”ではなく、お子さんの未来の上達スピードを守るための、大切なルールなのです。
家庭でのサポート方法(親御さんは見守るだけでOK)

左利きのお子さんが練習を始めたとき、ご家庭でどうサポートすればよいのでしょうか。結論から言うと、親御さんは”見守る”だけで十分です。
まず、一日の練習時間は5〜10分で十分です。左利きのお子さんは計算ができないわけではありません。指が右手の動きに慣れていないだけです。だから、長時間の反復練習は必要ありません。短く、毎日続けることが何よりも効きます。
そして練習内容は、新しい問題ではなく”復習”をメインにしてください。同じ問題を繰り返すことで、指の動きがスムーズになり、脳が”右手でそろばんを弾く”感覚を自然に身につけていきます。
お子さんが「左手で弾きたい」と言ったときは、叱らずに「今はちょっと難しいけど、右手でできるようになったら、すごく早く計算できるんだよ」と励ましてあげてください。叱ってしまうと、そろばん自体を嫌いになってしまうことがあります。やさしく、でも譲らず。このスタンスが大切です。
特別な教具や高価な教材は必要ありません。そろばん1つ、ノート1冊、鉛筆1本、そして親御さんのやさしいまなざしがあれば、左利きのお子さんはきっと伸びていきます。
左利きの子に合うそろばん教室の選び方
左利きのお子さんに合うそろばん教室を選ぶとき、押さえておきたいポイントが3つあります。
① 右手指導が基本の教室を選ぶ
先ほどお話ししたとおり、ほぼすべてのそろばん教室は左利きのお子さんにも右手で弾かせます。これが基本です。もし「左手でも弾かせますよ」と言われたら、少し慎重に検討したほうが良いでしょう。長期的な上達を考えたとき、右手で弾く基礎を一度通ることは、お子さんの大きな財産になります。
② オンライン教室だと”全員が最前列”
左利きのお子さんは、指の動きを丁寧に見てもらえる環境が理想です。オンラインそろばん教室は、画面越しに全員が最前列で先生と向き合う形になるため、先生の目が一人ひとりに届きやすくなります。対面の集団授業だと、後ろの席から先生の手元を見るのが難しいこともあるので、”よく見てほしい”という保護者の方にはオンラインが特におすすめです。詳細はオンラインそろばん完全ガイドで解説しています。
③ 魔法の質問:「暗算はいつから始められますか?」
そろばん教室を比較するとき、ぜひこの質問をしてみてください。指導力の高い教室ほど、暗算への移行が早い傾向があります。暗算はそろばんの真の目的ですから、そこまでの道筋が明確な教室が、左利きでも右利きでも、お子さんを伸ばしてくれる教室です。
教室選び全般についてはそろばん教室の選び方|失敗しないための5つのポイントもあわせてご覧ください。
左利きのお子さんの親御さんからよくある質問
Q. 左手で弾きたがるのを、無理に直させるべきですか?
叱って直させるのはおすすめしません。代わりに「右手でできたらもっと早くなるよ」と、前向きな言い方で伝えてあげてください。お子さんの自発的な気持ちを引き出すほうが、結果的に早く身につきます。
Q. 左利きの子は、何歳から始められますか?
右利きのお子さんと同じで、目安は4〜6歳ごろからです。ただ、3歳から始めて楽しく続けているお子さんもいます。大切なのは年齢よりも、お子さんの興味と、楽しく通える環境が整っているかどうかです。
Q. 左利きでも1級まで取れますか?どれくらいかかりますか?
もちろん取れます。KSJの左利きの生徒さんの中には、2〜3年で1級に合格したお子さんが多数います。右利きのお子さんとほぼ同じペースか、場合によってはそれ以上のスピードで進むことも少なくありません。
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以下の記事もあわせて読むと、そろばん学習の全体像が見えてきます。
まとめ:左利きのお子さんは”むしろ有利”です
この記事のポイントを振り返ります。
- 左利きのお子さんはそろばんで不利ではなく、慣れた後はむしろ有利になる
- 理由は、右手で計算しながら左手でそのまま答えを書けるからスピードで勝てる
- 最初の2ヶ月の壁を越えると、成長カーブが一気に立ち上がる
- ご家庭では1日5〜10分の復習と、やさしい見守りで十分
- 教室選びでは「暗算はいつから?」と聞くのが最強の質問
左利きのお子さんをお持ちの保護者の皆様、どうか自信を持って、そろばんを選択肢に入れてあげてください。KSJでは、左利きの生徒さんの体験レッスンも大歓迎です。お子さんの輝く可能性を、ぜひ一度、私たちと一緒に見てみませんか。


