一時帰国で、友達と話せなかった|海外の子どもの日本語を維持する「もう一つの方法」【26ヶ国770名指導】

一時帰国先の公園で、日本の友達の輪の手前で言葉が出てこず戸惑う海外育ちの女の子

こんにちは。川上スクールジャパン代表の、たけのり先生です。オンラインそろばん教室を運営していて、いま世界26ヶ国・約770名の生徒さんに教えています。

今日は、そろばんの記事なのに、ほとんど「日本語」の話をします。海外に住むご家庭から、こんな相談をよくいただくからです。

「夏に一時帰国したんです。それで、久しぶりに家族や、仲の良かった友達と会って——あれ?と思ったんです。うちの子、うまく会話ができていない」

この記事は、そのときの気持ちのまま検索してたどり着いた方のために書きました。

先に申し上げます。それは、あなたの努力が足りなかったからではありません。そして、今からでも間に合う場合がほとんどです。

この記事の要点

  • 日本語は、話さなくなると忘れるのが早い言語です。気づくきっかけは一時帰国での会話であることが多いです
  • 補習校は「日本語を学ぶ」場所。それに加えて「日本語で何かをする時間」があると、言葉が生活に戻ります
  • KSJは日本語を教えていません。日本語で、そろばんを教えています。週に何度も、日本語しか使わない時間が生まれます
  • 最初はみんな黙っています。英語が先に出る子もいます。その子のペースで大丈夫です
  • 唯一のデメリットは青森なまりがうつることです(笑)。でもそれこそが、生きた日本語に触れている証拠でもあります

「あれ?会話ができていない」と気づく瞬間は、たいてい一時帰国です

海外に住むご家庭が子どもの日本語に不安を持つきっかけは、その多くが「一時帰国したとき」です。

普段は気づきません。家の中ではママが日本語で話しかけていますし、子どもも「うん」「わかった」くらいは返してくれます。それで会話は成り立ってしまいます。

ところが日本に帰って、おじいちゃんおばあちゃんや、去年遊んだお友達と話す場面になった瞬間に、それが見えてしまう。相手の言っていることに、うまく返せない。会話が続かない。子ども自身も、少し困った顔をする。

あの瞬間の、胸がすっと冷たくなる感じ。多くの保護者の方が経験されています。

そして、これは能力の問題ではありません。日本語は、ほかの言語に比べても難しい言葉です。その分、話さなくなると忘れるのも早いのです。ひらがな・カタカナ・漢字があって、数の数え方ひとつとっても「ろっぴゃく」「はっぴゃく」と音が変わります。使い続けていないと、するりと抜けていきます。

つまり、忘れていくのは自然なことなのです。足りなかったのは愛情でも努力でもなく、「日本語を使う時間」だけです。

補習校に通わせているのに、なぜ足りないと感じるのでしょうか

補習校は「日本語を学ぶ」場所で、日々の生活で「日本語を使う」場所とは役割が違うからです。

誤解のないように書きますが、補習校はすばらしい場所です。KSJの生徒さんにも通っている子がたくさんいますし、あそこでしか学べないものが確かにあります。否定する気は少しもありません。

ただ、補習校で子どもが向き合っているのは、教科としての日本語です。国語の教科書を読み、漢字を書き、宿題が出る。日本語が「勉強の対象」になります。

実際、KSJに入られたあるご家庭は、こうおっしゃっていました。地域の補習校に通わせてみて、「これとは別に、日本語をいつも話している日本の教室で、何かを学ばせなければ」と思ったのだそうです。それでそろばんを選ばれました。

この違いは、とても大きいと思っています。

どちらが優れているという話ではなく、両方あっていいのだと思います。そして海外では、後者の時間だけがすっぽり抜け落ちやすいのです。

KSJは、日本語を教えていません。日本語で、そろばんを教えています

海外の自宅からオンラインで日本語のそろばんレッスンを受け、できましたと手を挙げる女の子

KSJのレッスンはすべて日本語で行われます。日本語の授業ではなく、日本語を道具として使う時間です。

ZOOMをつなぐと、そこは日本の教室です。「お願いします」と挨拶して、日本人の先生が日本語で問題を読み、数字を日本語で数え、「できました」と日本語で報告して、「ありがとうございました」で終わります。

その間ずっと、子どもは日本語を「勉強」していません。そろばんをやっているだけです。でも、日本語しか使っていません。

実は、海外の保護者の方から「そろばんを通じて日本語も学ばせたい」というご要望はとても多くいただきます。だからこそ、KSJは日本語で指導を続けています。

ちなみにKSJの海外のご家庭は、6割ほどが国際結婚のご家庭です。3割半が移住・駐在のご家庭。つまり多くのお子さんが、家の外では日本語をまったく使わない環境で暮らしています。その子たちにとって、週に何度かのこの時間は、思っている以上に大きいようです。

最初は、みんな黙っています

始めたばかりの子は、日本語を理解するのに時間がかかり、すぐに親御さんへ助けを求めます。それが普通のスタートです。

正直にお伝えします。最初からすらすら会話できる子は、ほとんどいません。

先生の言葉を理解するのに時間がかかります。分からないと、すぐ横にいるママに英語や現地の言葉で助けを求めます。ママが通訳して、やっと進む。最初の数週間は、だいたいそんな感じです。

それでいいのです。私たちもそのつもりでいます。先生たちはなるべく難しい日本語を使わないようにしていますし、ママにそばについていただくこともお願いしています。

そして、だんだん理解のスピードが上がってきます。ある日、通訳がいらなくなります。自分で会話が成立するようになります。

もちろん個人差があります。どうしても日本語より先に英語が出てきてしまう生徒もいます。そういうときは、先生たちもそれに合わせて英語で返したり、その会話自体を楽しんだりしています。日本語で言えなかったことを責める先生は、KSJにはひとりもいません。

速い子もいれば、ゆっくりな子もいます。その子のペースで大丈夫です。焦らせて日本語を嫌いになってしまうことのほうが、ずっと怖いですから。

正直に言います。KSJに通う唯一のデメリットは「青森なまり」です

KSJの先生の多くは青森に住んでいるため、生徒さんの日本語に青森なまりがうつります。

これは本当の話です。デメリットとして、先にお伝えしておきます。

私たちは青森県十和田市の教室から教えています。先生たちも青森に住んでいますから、どうしても訛ったまま指導してしまいます。その結果、どうなるか。

とってもかわいい海外の顔をしているのに、日本語を話すと田舎の人みたいな話し方をする生徒が出てきます(笑)。

正直に言うと、これがめちゃくちゃ可愛いんです。

ただ、笑い話として書いておきながら、私はこれを結構大事なことだと思っています。

なまりは、教科書からはうつりません。

ドリルを何冊やっても、アプリをどれだけ触っても、青森弁にはなりません。動画を見ても、そうはなりません。訛るということは、その子が生きている人間から、生きた日本語を丸ごと受け取っているということです。教材ではなく、人から言葉をもらっている。

ロンドンやニューヨークに住む子が、青森のイントネーションで「できました」と言う。私はあれを聞くたびに、ああ、この子には日本語がちゃんと届いているんだな、と思うのです。

そして、次の一時帰国で起きたこと

次の一時帰国で日本の友達の輪の中に入り、身振り手振りで海外の話を教えて一緒に笑う女の子

日本語が続いた子は、一時帰国で友達と普通に会話して遊べるようになり、さらに現地の言葉を教えてあげる側にもなっています。

KSJの海外の生徒さんには、夏休み前に一時帰国して、日本の地元の学校に通う子がたくさんいます。毎年その時期に通うので、覚えていてくれるお友達がいるのです。

そのお友達と、日本語で会話して、一緒に遊ぶ。それがとても嬉しかった、と話してくれた子がいます。

そして、ここからが私の好きなところなのですが——その子たちは、日本の子から日本のいろいろなことを学びながら、逆に日本の子たちに、現地の話や言葉を教えてあげているのだそうです。英語を教えてあげたりして。

教わるだけの子ではなく、あげられる子になっている。保護者の方も「コミュニケーションの取り方が、今までと変わりました」と喜んでくださっています。

あの日「うまく会話ができていない」と胸が冷えたのと、同じ場所で。同じお友達と。

日本語を守るというのは、たぶん、その子が二つの世界のどちらにも居場所を持てるようにしてあげるということなのだと思います。海外生の物語は青森の小さな教室に世界26ヶ国から生徒が集まった話にもまとめていますので、よければあわせて読んでみてください。

世界のどこにいても、無理のない時間に受けられます

KSJは日曜・祝日以外は毎日レッスンを行っていて、さらに火・木・土は日本時間の深夜0時〜2時にも開いています。

日本語の時間を作りたくても、生活が壊れては続きません。だからKSJは、コンビニのような時間帯で開けています。

この深夜の枠が効きます。日本の深夜0時は、ロンドンなら夕方16時=ちょうど放課後ニューヨークなら11時=お昼どきロサンゼルスなら朝8時です。お子さんを夜中に起こす必要はありません。アジアのご家庭には、終了時間を1時間遅らせる対応もしています。

ちなみに、その時間に起きているのは青森の先生たちのほうです(笑)。オンラインそろばんに必要なものや始め方はオンラインそろばんの始め方・必要なものの解説にまとめています。

料金は、世界中どこでも同じです

KSJは国内の生徒さんも海外の生徒さんも、まったく同じ料金です。海外料金や上乗せはありません。

月額7,700円(8コマ)/9,350円(12コマ)/11,000円(16コマ)。海外のご家庭のお支払いは、ほとんどがPayPalです。少数ですがWiseの方もいらっしゃいます。

ときどき「海外に住んでいるから、消費税分はいらないですよね?」と言われます。答えは「いいえ、同じです」です。

最近は海外の方から授業料を高くいただこうとする教室や先生も見かけますが、私にはどうしても理解できません。同じことを指導するのに、なぜ料金を上げるのでしょうか。先生の指導力が急に上がるわけでも、特別な力を使えるわけでもないのに。住んでいる地域や国が違うから料金が変わるというのは、その方に失礼ではないかと思うのです。

だからKSJは、何を言われても全員一律です。宇宙から習っても一律です(笑)。

正直にお伝えしておきたいこと

日本語がまったく分からないお子さんの場合は、KSJではなく、私たちがサポートしているアメリカの教室をご紹介しています。

KSJのレッスンは日本語だけで進みます。ですから、日本語をまったく理解できない状態だと、そろばん以前につらい時間になってしまいます。実際、お問い合わせの0.5%ほどがこのケースで、その場合は無理にお誘いせず、アメリカの教室をご案内しています。そのお子さんにとって、そのほうが良いからです。

逆に言えば、「日本語が苦手」くらいなら、ほとんどの場合は大丈夫です。カタコトでも、単語だけでも、ママの通訳つきでも構いません。そこから始めた子が、たくさんいます。

なお、今後は英語やほかの言語で指導できる先生も増やしていきたいと考えています。海外在住でそろばんを習う流れは海外在住でもそろばんは習える|26ヶ国の生徒が学ぶオンライン教室のリアルで詳しく解説しています。

よくあるご質問

そろばんで本当に日本語は維持できますか?

レッスンがすべて日本語で行われるため、週に何度も日本語だけを使う時間が生まれます。日本語の授業ではありませんが、道具として使い続けることで、話す・聞く力が保たれやすくなります。

補習校に通っています。両方は多すぎませんか?

役割が違うので、両立されているご家庭がたくさんあります。補習校は日本語を学ぶ場所、そろばんは日本語で何かをする時間です。回数は8コマ・12コマ・16コマから選べますので、無理のないところから始められます。

子どもの日本語がカタコトでも入れますか?

はい、ほとんどの場合は大丈夫です。先生は難しい日本語を避けますし、最初は保護者の方に横についていただいて構いません。まったく理解できない場合のみ、アメリカの提携教室をご案内しています。

時差があっても通えますか?

通えます。火・木・土の日本時間0時〜2時の枠が、ロンドンの放課後・ニューヨークのお昼・ロサンゼルスの朝にあたります。お住まいの国を伝えていただければ、合う時間をご提案します。

何歳から始められますか?

3歳の生徒さんもいますが、5〜6歳で始める子が多い印象です。年齢の窓が閉じることはありませんので、思い立ったときが始めどきで大丈夫です。3歳・4歳のそろばんは早すぎるかどうかの解説もご参考ください。

海外だと料金は高くなりますか?

なりません。国内・海外まったく同じ料金です。お支払いはPayPalが中心で、Wiseもお使いいただけます。

おわりに

日本語が抜けていくのは、お子さんのせいでも、あなたのせいでもありません。ただ、使う時間がなかっただけです。

だとしたら、作ればいい。勉強として増やすのではなく、その子が夢中になれる何かを、日本語でやればいい。それだけのことだと思っています。

そろばんは、そのための一つの方法にすぎません。ほかの方法でもいいと思います。ただ、うちには26ヶ国・770名の子どもたちが実際にいて、その子たちが青森なまりで「できました」と言ってくれている。それだけは、確かなことです。

次の一時帰国で、お子さんがお友達と笑って遊んでいる姿を見られますように。

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